死亡事故の賠償金の支払基準

万一不幸にも交通事故で死亡してしまった場合の慰謝料などの賠償金は以下のように算定されます。

■損害賠償額の支払は定型化・定額化されている

示談交渉を行うときの便宜のために、損害に対する賠償額は出来る限り客観化されていることが望ましいと言えます。
そのため、多くの損害賠償の支払基準は定型化・定額化されています。支払基準としては、日弁連交通事故相談センターの基準がある他、各損害保険会社がそれぞれ独自に設定した基準があります。
保険会社の担当者が加害者に代わって示談交渉するときは、保険会社の支払基準に基づいて賠償額を提示してきます。
しかし、各保険会社の支払基準は一般的には日弁連の基準より低く設定されています。被害に遭われた場合は安易に保険会社の提示額に妥協せずに、納得がいくまで交渉を続けることが必要です。

■亡くなるまでに支払った費用について

同じ交通事故死であっても、死亡までの経緯によって、遺族が加害者に請求できる損害賠償の内容に違いが出ます。
即死の場合と、手術や治療を試みたものの亡くなってしまったという場合です。
即死の場合は、定額化された賠償額の支払が認められます。
一方、入院して治療行為を受けた後に死亡した場合は、即死の場合の賠償額に、死亡に至るまでの傷害に対する賠償額が加算されます。つまり、入院費、治療代、付添看護をした場合には付添看護費、入院雑費、交通費など実際に支出した費用のはか、休業補償や慰謝料についても、即死の場合の損害賠償に加算して請求することが出来ます。

■葬儀費用などの諸費用も請求できる

葬儀費用とみなされる範囲は、まず、病院からの遺体運搬費があります。また、火葬費、葬儀屋に支払った費用、自動車代、僧侶へのお布施などが葬儀費用に含まれます。
しかし、香典返しや弔問客接の待費については葬儀費用として請求することは出来ません。
なお、初七日や49日での読経料、回向料などの法要費は葬儀費用に含まれます。また、仏壇の購入費やお墓の設置費用については葬儀費に若干加算されるケースや一部を別途認めるケースはあります。
葬儀費用についても定額化されてきていまして、120万円未満であれば実費で、それをこえると120万円の限度で請求できます。ただ、葬儀といっても多様なので、150万円までを費用と認めた判例も有ります。

■逸失利益はどういうものか

一般的に逸失利益はかなりの高額となります。そのため、示談交渉においても被害者側と加害者側(保険会社)とで見解の相違を生じやすくなるところです。
逸失利益とは、被害者が事故にあわずに生き続けていたら、67歳になるまでの間(就労可能年数)に取得したと推定される利益(収入)のことを言います。
この67歳という年齢は、裁判所や保険会社が一般の人が働ける年齢の上限として認めているものです。
そこで、被害者の収入をいくらに見積もって計算するかと言う事が大きな問題となります。
被害者の収入の証明は相続人がすることになります。そこで、相続人は被害者が勤めていた会社の協力を得たり、確定申告書を見つけるなどして証明のための資料を集めることになります。

■逸失利益の算出の仕方

1 被害者の年収をだす

被害者の年収を割り出しますが、被害者の実際の年収を基礎として割り出す方法と、統計による平均的年収を基礎として割り出す方法があります。
被害者によって従事していた職業も様々なので、給与所得者、個人事業者、家事従業者など、職種に応じて算定の方法が異なってきます。

  1. 公務員や会社員の場合
    公務員や会社員の場合は、収入が比較的安定しておりかつ客観的な証明も可能なので、算出は容易です。被害者の勤務先の発行する源泉徴収表や所得証明書などで証明することになります。
    退職金については、定年まで勤務すれば得られたであろう退職金額との差額を逸失利益として請求しますが、中間利息は控除することになります。
    定年退職後の収入については、退職時の収入の一定割合(50~70%)を基礎に算出したり、67歳までの賃金センッスによって算出したりします。
  2. 自営業者や自由業者の場合
    被害者が自営業者の場合は、前年度の確定申告額が算出の根拠となります。ただ、実際には税務署への申告額以上の所得があった場合は、相続人が帳簿や領収書などを使ってそれを証明することになります。この点が、給与所得者と違って難しいところです。
  3. 農漁業従事者の場合
    農漁業従事者は、前年度の確定申告額によって証明します。なお、農漁業従事者による農業所得の申告は、原則として「収支計算」によって行います。
    収支計算とは、実際の収入金額から必要経費を差し引いて所得を算出する方法で、経費が分からない場合は、農業収入額から経費目安割合を控除した所得を算出しています
  4. 専業主婦の場合
    被害者が専業主婦の場合は、女性労働者の賃金センサスによる「学歴計平均給与」を使用して算出することになります。

2 被害者の年間消費支出を出す

生涯の収入が算出されても、それをそのまま請求することは出来ません。仮に生存していたら生活のために収入の一部を消費しているはずなので、その分は差し引かなければ不公平になるからです。客観化のために日弁連の掲げる「年間収入に対する生活費控除の割合」によると、以下のようになります。
①一家の支柱(男児を含む)については30~40%
②女子(女児、主婦を含む)については30~40%
③男子独身者については50%

3 年収から年間消費支出額を差し引いて、年間純利益を出す。

上記のように調査した被害者の年収から、年間消費額を差し引くと、被害者の年間純所得がでます。

4 被害者の就労可能年数を算出する(死亡時の年齢から67歳までの年数)

被害者の年齢が67歳以上であったり、67歳に近い場合(55歳以上の者)は平均余命の2分の1とします。
また、幼児や未成年者の場合は、18歳から67歳までの49年間とします。

5 年間純利益に就労可能年数を掛け、その合計額にライプニッツ式により計算する

将来の収入を損害賠償金として一度にうけとることになるので、単純に計算すると、利子分だけは余分にもらうことになります。そこでこの利子分(中間利息といいます)を控除するため、裁判所では「ライプニッツ式」によって、複利計算で年利5%分を控除しています。

■過失相殺

交通事故ではほとんどのケースで多かれ少なかれ過失相殺がなされます。死亡事故の場合、損害賠償の金額は多額になりますので、過失相殺が数%程度上下するだけで、金額がかなり異なってきます。
被害者の相続人としては、加害者側が主張する過失相殺率に対して対抗が出来るように準備する必要があります。
もちろん、本人である被害者はすでに亡き人となっているため、反論の根拠となる証拠も収集しづらいのは確かですが、目撃者の協力を得るなど入念な準備をします。

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