後遺症が残った場合の損害賠償請求は?

賠償額は労働能力喪失率と労働能力喪失年数で決まります。

■後遺症について賠償請求は出来るか

後遺症とは、傷害をうけた結果、傷の治療が終わっても、傷害がのこるものをいいます。代表的なものにむち打ち症が有りますし、他には失明したり手足指などの切断があります。
自賠責保険では傷害と後遺障害とで保険金を分けています。よって、損害賠償の請求をする場合は両者を区分して算出することになります。その区分は病院で治療が終わって症状が固定するまでの損害が傷害による損害で、症状が固定した後の損害が後遺症による損害となります。
示談交渉は通常退院後に開始しますが、後遺症がある場合や後遺症が出そうなときは、後遺障害等級が出る前は示談交渉に入ってはいけません。
それは、後遺障害の程度によって損害賠償額がさらに高額となる可能性があるからです。
また最高裁での例外的な判決はありますが、原則的には示談を結べば、再度示談をやり直したりは出来ないからです。

■むち打ち症の場合の損害賠償請求について

むち打ち症ほどやっかいなものも少ないです。ほとんどの場合、被害者の自覚症状を根拠に診断せざるを得ないからです。
自覚症状としては、頭痛、肩こり、耳鳴り、しびれ、倦怠感、吐き気など様々で、一般に専門医でも決定的な診断を下すことが難しいと言われています。
後遺症としてむち打ち症を発症している場合、神経症状が強く、治療が長期になりやすいので、入院や通院のために仕事を休んだことに対する休業補償は、一般の負傷の場合よりま被害者に有利に算出され、また、労働能力が落ちたことによる逸失利益は、特有の等級をつけて算定されます。
ただ、被害者が積極的に回復に対する意欲がなかったり、結果治療が長引いたりした事例では40%の過失相殺を命じた判例もあります。

傷害とは別に後遺障害の賠償を請求する

後遺症に対する損害は、おもに積極損害、逸失利益、慰謝料があります。
積極損害は後遺症のために出費を強いられたことによる損害で、義足や義眼などの作成費用がこれに当たります。
逸失利益は、後遺症がのこったことによって本来獲得できたはずの収入が減少する場合に請求できます。たとえば、むち打ち症が残ったために長時間の労働に耐えられなくなったとか、片手を失ったために自動車の運転手が出来なくなったといった場合がこれにあたります。
慰謝料は、後遺症が残ったことから受ける精神的苦痛に対する賠償です。

■後遺障害等級の認定を有利に運ぶ

等級確定の手続きは、まず医師に「後遺障害診断書」を作成してもらい、加害者の保険会社に後遺障害診断書を提出した上で、等級の認定を請求します。
損害保険料率算出機構が「後遺障害別等級表」に照らして等級の認定がされることになります。
ここでの認定作業はほとんど書面審査だけですので、医師に診断を受けるときには、自分の症状を正確に伝えることが大切になります。

後遺障害の等級認定に不満がある場合

被害者として後遺障害の等級認定に不満があるときには、自賠責保険の保険会社に対して異議の申立をすることが出来ます。
異議が提出されると「損害保険料率算出機構」の地区本部が再審査を行います。
その再審査の結果に不服が有る場合は、「自賠責保険後遺障害審査会」で審査されます。さらにこの等級認定について意見がわかれた場合に備えて、自賠責保険・共済紛争処理機構による調停制度が用意されていて、専門知識を有する弁護士や意思から構成される紛争処理委員会が構成中立な立場から、調停を行います。

■重度の後遺症の場合は将来の介護料を請求する

後遺障害が非常に重く第1級や第2級などに該当する場合は、介護が必要となりますので、「介護料」を請求することが出来ます。
介護を必要とする期間は、原則として被害者が亡くなるまでです。具体的には厚生労働省が毎年1回発表する「簡易生命表」の平均余命を使用して死亡までの期間を算出します。介護費用については、介護のための付添人を雇う場合は実費全額、近親者の付添人の場合は1日あたり5000~6500円として計算します。
このようにして算出された介護料は、将来において必要となる経費を現時点で支払わせるものなので、利息分は控除されます。
なお、後遺症のためバリアフリーにするなど、住居を改造する必要が生じた場合は、その改造に要する費用も請求できます。

■慰謝料請求は地方裁判所基準でする

後遺症が残った場合には、それによって被った精神的苦痛について慰謝料を請求できます。このとき、自賠責保険の基準よりも地方裁判所の後遺障害の慰謝料を基準とするほうが、被害者に有利です。
さらに、被害者の傷害が「重度後遺症」の場合は、先にも書きましたが、近親者(父母・配偶者・子)としての固有の慰謝料を請求できる場合があります。
重度後遺障害とは、①両眼失明、②そしゃくと言語の機能(口の機能)の全廃③その他身体の著しい障害(手、足の欠損など)のことです。慰謝料の額は、障害者本人の金額の20~30%、被害者が幼児で一生介護が必要な場合などはそれ以上となっております。

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